『イシューからはじめよ』をまとめてみた
安宅和人『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』を読了したので、要点をまとめてみました。
著者のマッキンゼー&大学での研究の経験を基にした内容でしたが、
問題設定→仮説立て→調査→分析→他人への伝達
というフローで仕事や研究をしている人には参考になる点が多い本かと思います。
元になった著者のブログ記事
http://d.hatena.ne.jp/kaz_ataka/20081018/1224287687
↑本書が書かれるきっかけとなった記事です。
本書の核の部分を掴みたいという方はこちらも是非ご覧になってください。
- 作者: 安宅和人
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2010/11/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 48人 クリック: 660回
- この商品を含むブログ (145件) を見る
目次
はじめに 優れた知的生産に共通すること
■序章 この本の考え方―脱「犬の道」
■第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
■第2章 仮説ドリブン(1)―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
■第3章 仮説ドリブン(2)―ストーリーを絵コンテにする
■第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
■第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう
はじめに
悩まない、悩んでいるヒマが有ったら考える
「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに「考えるフリ」をすること
「考える」=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること
序章 この本の考え方 -- 脱「犬の道」
この本の生産性の定義:どれだけのインプット(投下した努力と時間)で、どれだけのアウトプット(成果)を生み出せたか
生産性 = アウトプット/インプット = 成果/投下した労力・時間
プロフェッショナル:
特別に訓練された技能をもつだけでなく、それをベースに顧客から対価をもらいつつ、意味あるアウトプットを提供する人のこと
バリューの本質
- イシュー度
- 解の質
イシューの定義:下のAとBの条件を両方満たすもの
A)a matter that is in dispute between two or more parties
2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
B) a vital or unsettled matter
根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
イシュー度:自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す重要性の高さ
解の質:そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い
問題解決を担うプロフェッショナルになろうとするなら、「イシュー度」と「解の質」の2軸からなるマトリクスをいつも意識することが大切
「バリューのある仕事」ができるようになるためにはどうすればよいのか?
絶対にやってはならないのが、「一心不乱に大量の仕事をして右上に行こうとする」こと
「労働量によって上にいき、左回りで右上に到達しよう」というアプローチを「犬の道」と呼ぶ
世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない
世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらい
多くの仕事を低い質のアウトプットで食い散らすことで、仕事が荒れ、高い質の仕事を生むことができなくなる可能性が高い。
つまり「犬の道」を歩むと、かなりの確率で「ダメな人」になってしまう。
本当に右上の領域に近づこうとするなら、まずは横軸の「イシュー度」を上げ、その後に縦軸の「解の質」を上げていく
仕事を始めたばかりでこの判断ができないなら、自分の上司なり指導教官なりに聞けばよい
「自分が思いついた問題の中で、本当に今答えを出す価値のあるものは何でしょうか」
次に絞り込まれたなかで特に「イシュー度」の高い問題から手をつける。
この場合、「解きやすさ」「取り組みやすさ」といった要因に惑わされてはならない。
あくまで「イシュー度」の高い問題からはじめる。
「解の質」を上げるためには、まず個々のイシューに対して十分な検討時間を確保すること
よい仕事をし、周囲からよいフィードバックを得ることで、はじめて人は「解の質」を学ぶことができる
このアプローチのためには、最初のステップ、すなわち「イシュー度」の高い問題を絞り込み、時間を浮かせることが不可欠
「バリューのある仕事」を生み出すプロセス
- 今本当に答えを出すべき問題=「イシュー」を見極める(イシュードリブン(第1章))
- イシューを解けるところまで小さく砕き、それに基づいてストーリーの流れを整理する(仮説ドリブン1(第2章))
- ストーリーを検証するために必要なアウトプットのイメージを描き、分析を設計する(仮説ドリブン2(第3章))
- ストーリーの骨格を踏まえつつ、段取りよく検証する(アウトプットドリブン(第4章))
- 根拠と構造を磨きつつ、報告書や論文をまとめる(メッセージドリブン(第5章))
生産性を高めるカギは、このサイクルを「素早く回し、何回転もさせる」こと
一度サイクルを回して一段深い論点が見えてくれば、それをベースにして再度サイクルを回す
成長は意味あるアウトプットをきっちりと出すことからしか得られない
人に聞けば済むことはそうすればよいし、今よりも簡単な方法でできるのであればそうするべき
「どこまで変化を起こせるか」によって対価をもらい、評価される。
「どこまで意味のあるアウトプットを生み出せるか」によって存在意義が決まる。
1章 「解く」前に「見極める」
「犬の道」に入らないためには、正しくイシューを見極めることが大切
問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」こと
「やっているうちに分かってくるさ」という成り行きまかせではむだの多い生産性の低いアプローチとなる
「これは何に答えを出すためのものか」というイシューを明確にしてから問題に取り組まなければあとから必ず混乱が発生し、
目的意識がブレて多くのムダが発生する
イシューを見極める上で
「実際にインパクトがあるか」
「説得力あるかたちで検証できるか」
「想定する受け手にそれを伝えられるか」
という判断が必要になるが、それにはある程度の経験と「見立てる力」が必要になる
=>何人かの頼りになる相談相手に確認するのが手っ取り早い
イシューの見極めにおいては、強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てる(≒スタンスをとる)ことが肝心
「やってみないと分からない」ということは決して言わない
理由
- イシューに答えを出すため
- 必要な情報・分析すべきことを明確にするため
- 分析結果の解釈を明確にするため
イシューと仮説は言語化することが必須。言葉で表現しないと、誤解が生じ、大きなズレやムダを生む
イシューと仮説は紙や電子ファイルに言葉として表現することを徹底する
言葉にできない=イシューの見極めと仮説の立て方が甘い
人間は言葉にしない限り概念をまとめることができないし、明晰な思考を行うことは難しい
言語化のポイント
- 主語、動詞
- WHY < WHERE, WHAT, HOW
- 比較表現
よいイシューの3条件
- 本質的な選択肢である(その結論によって大きく意味合いが変わる)
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
人が何かを理解する=2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見する
構造的な理解の4つのパターン
- 共通性の発見
- 関係性の発見
- グルーピングの発見
- ルールの発見
イシュー特定のための情報収集--コツ
- 一次情報に触れる
いかに表現、情報といえども、二次的な情報は何らかの多面的かつ複合的な対象のひとつの面を巧妙に引き出したものに過ぎない
- 基本情報をスキャンする
- 集め過ぎない・知り過ぎない
情報収集の効率は必ずどこかで頭打ちになり、情報があり過ぎると知恵が出なくなるもの
イシュー特定の5つのアプローチ(通常のやり方ではイシューが見つからない場合)
- 変数を削る
- 視覚化する
- 最終形からたどる
- 「So what?」を繰り返す
- 極端な事例を考える
2章 仮説ドリブン1:イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
イシュー分析=ストーリーライン×絵コンテ
イシューの構造を明らかにし、そのなかに潜むサブイシューを洗い出すとともに、それに沿った分析のイメージ作りを行う過程
STEP1 イシューを分解する
サブイシュー:おおもとのイシューを「答えを出せるサイズ」にまで分解したもの cf)ゆで卵スライスの例
分解する際にMECEを意識するだけでは足りない、本質的に意味のある固まりで砕くことが大切
分解する際には「型」を使う、なければ逆算する(「最後に何がほしいのか」から考え、そこから必要となる要素を何度も仮想的にシュミレーションする)
イシューを分解する効用
- 課題の全体像が見えやすくなる
- サブイシューのうち、取り組む優先順位の高いものが見えやすくなる
STEP2 ストーリーラインを組み立てる
典型的なストーリーの流れ
- 必要な問題意識・前提となる知識の共有
- カギとなるイシュー、サブイシューの明確化
- それぞれのサブイシューについての検討結果
- それらを統合した意味合いの整理
ストーリーラインが必要となる理由
- 単に分解されたイシューとサブイシューについての仮説だけでは論文やプレゼンにならない
- ストーリーの流れによって、以後に必要なる分析の表現方法が変わってくることが多い
ストーリーラインは検討が進み、サブイシューに答えが出るたびに、あるいは新しい気づき・洞察が得られるたびに、書き換えて磨いていくもの
それぞれのフェーズにおけるストーリーラインの役割
立ち上げ段階:何が見極めどころであり、いったい何を検証するためにどのような活動をするのか、という目的意識を揃える
分析・検討段階:イシューに対する仮説の検証がどこまでできているのかが明確に
まとめの段階:最終的なプレゼン資料、論文を取りまとめるための最大の推進装置
ストリーラインの2つの型(ピラミッドストラクチャー)
- WHYの並び立て
- 空・雨・傘
課題の確認=>課題の深堀り(サブイシューの特定)=>結論
雨が最も肝心
3章 仮説ドリブン2 ストーリーを絵コンテにする
実験には、2つの結果がある。もし結果が仮説を確認したなら、君は何かを計測したことになる。
もし結果が仮説に反していたら、君は何かを発見したことになる。 - エンリコ・フェルミ
絵コンテ:分析イメージ
イシューの見極めと分解、それに基づくストーリーラインがないと絵コンテは作れない
「どんなデータが取れそうか」ではなく、「どんな分析結果がほしいのか」を起点に分析イメージをつくる
絵コンテづくりの3つのステップ
- 軸の整理
- イメージの具体化
- 方法の明示
STEP1 軸を整理する
単に「○○について調べる」ではなく「どのような軸でどのような値をどのように比較するか」ということを具体的に設計する
著者考える分析の共通項:比較
優れた分析は比較の軸が明確で、それぞれの軸がイシューに答えを出すことに直結している
定量分析の3つの型+比較
- 構成(全体と部分の比較)
- 変化(時間軸上での比較)
分析は「原因側」と「結果側」の掛け算で表現される
比較する条件:原因
評価する値:結果
STEP2 イメージを具体化する
分析的思考における「意味合い」
- 差がある
- 変化がある
- パターンがある
STEP3 方法を明示する
- どんな分析手法を使ってどんな比較を実現するか
- どんな情報源から情報を得るのか
column 知覚の特徴から見た分析の本質
神経系の特徴
- 閾値を超えない'''入力'''は意味を生まない
- 不連続な差しか'''認知'''できない
- '''理解'''するとは情報をつなぐこと
- 情報をつなぎ続けることが'''記憶'''に変わる
これを説明に活かす
4章 アウトプットドリブン
いきなり分析や検証の活動をはじめない
最終的な結論や話の骨格に大きな影響力をもつ部分がある
具体的には「前提」と「洞察」
「イシューからはじめる」考え方で、各サブイシューについて検証する時には、フェアな姿勢で検証しなければならない
トラブルへの予防策の基本は、重大なことにできる限りヘッジをかけておくこと
Think ahead of the problem:できる限り先んじて考えること、知的生産における段取りを考えること
トラブル1 ほしい数字や証明が出ない
- 構造化して推定する
- 足で稼ぐ
- 複数のアプローチから推定する
トラブル2 自分の知識や技では埒が明かない
- 人に聞きまくる
- 起源を切って、そこを目安にして解決のめどがなければさっさとその手法に見切りをつける
MIT人工知能研究所の設立者、マービン・ミンスキーがリチャード・ファインマンを評した言葉-仲間の圧力に左右されない
- 問題の本質が何であるかをいつも見失わず、希望的憶測に頼ることが少ない
- ものごとを表すのに多くのやり方を持つ。一つの方法がうまく行かなければ、さっと他の方法に切り替える
回転数とスピードを重視する
- 仕事を完了させるために大切なことは、「停滞しない」こと
- 「受け手にとっても十分なレベル」を自分のなかで理解し、「やり過ぎない」ように意識する
- 完成度 < 回転数
- エレガンス < スピード
5章 メッセージドリブン
まとめの作業に取り掛かる前には、「どのような状態になったらこのプロジェクトは終わるのか」という具体的なイメージを描く
受け手に語り手と同じように問題意識をもち、同じように納得し、同じように興奮してもらう条件
- 意味のある話題を扱っていることを理解してもらう
- 最終的なメッセージを理解してもらう
- メッセージに納得して、行動に移してもらう
ひとつ、聞き手は完全に無知だと思え
ひとつ、聞き手は高度の知性をもつと想定せよ
(聞き手は専門知識を持っていないが的確な伝え方をすれば必ず分かってくれる)
シンプルにムダをなくす => 受け手の問題意識は高まり、理解度は大きく向上
イシューが曖昧 => 受け手の気は散り、理解度は落ちる
メッセージの確認プロセス
- 論理構造を確認
- ストーリーラインは「WHYの並べ立て」or「空・雨・傘」のいずれかで整理できているか
- 洞察や理由がMECEか
- 流れを磨く
- 全体を通したリハーサル
- エレベータテストに備える
- エレベーターで意思決定者に30秒でプレゼンできるか
優れたチャートが満たすべき条件とそのための作業
- イシューに沿ったメッセージがある
- 1チャート・1メッセージを徹底
- (サポート部分の)タテとヨコの広がりに意味がある
- タテとヨコの比較軸を磨く
- 選択をフェアに
- 順序に意味をもたせる
- 統合・合成
- 切り口を見直す
- サポートがメッセージを支えている
- メッセージと分析表現を揃える
column 「コンプリートワーク」をしよう
マッキンゼーの教え
「コンプリート・スタッフ・ワーク(Complete Staff Work)」
:自分がスタッフとして受けた仕事を完遂せよ。いかなるときも
最後までお読みいただきありがとうございました。
『武器としての決断思考』読書メモ
瀧本哲史『武器としての決断思考』を読んだので、
要点をまとめたいと思います。
- 作者: 瀧本哲史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 新書
- 購入: 18人 クリック: 365回
- この商品を含むブログ (133件) を見る
概要
タイトルに決断思考と有るが、ディベート思考の解説が大半。
かつてよりも決断が必要な時代になった
⇒ダメな判断・議論のパターン指摘
⇒判断力を強化するディベートの枠組みを解説
捕捉:判断材料を集める情報収集の方法
目次
はじめに 「武器としての教養」を身につけろ
ガイダンス なぜ「学ぶ」必要があるのか?
1時間目 「議論」はなんのためにあるのか?
2時間目 漠然とした問題を「具体的に」考える
3時間目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する
4時間目 反論は、「深く考える」ために必要なもの
5時間目 議論における「正しさ」とは何か
6時間目 武器としての「情報収集術」
7時間目 「決断する」ということ
はじめに 「武器としての教養」を身につけろ
現代の日本は安定成長期を終了したため、
これまでの価値観や方法、人生のレールというものは、
意味をなさなくなってきている
若い世代が最も学ぶべきは
「意思決定の方法」
あらゆるジャンルで自分で考え、
自分で決めなければならない場面が増えるだろうから
以後、ディベート = 意思決定のツールを紹介
ガイダンス なぜ「学ぶ」必要があるのか?
「知識」をなんらかの「判断」「行動」につなげられなければ、
なんの意味もない
(自動車の「認知・判断・動作」のイメージ)
知識よりも考え方を身につけた方がレバレッジが大きい
エキスパートよりもプロフェッショナルを目指すべき
筆者のプロフェッショナルの定義
- 専門的な知識・経験に加えて、横断的な知識・経験を持っている
- それらをもとに、相手のニーズに合ったものを提供できる
エキスパートは代替可能な人材である
解決まで持っていけるとは限らない
現代では「変化に対応できないこと」が最大のリスク
時代が「計画の時代」から「カードの時代」になった。
(選択肢を持っておいて、状況に応じてジャッジしていくイメージ?)
1時間目 「議論」はなんのためにあるのか?
ディベートの存在意義
- 正解ではなく、「いまの最善解」を導くための議論
人の認識や意思決定はゆがみやすい
陥りがちな「3つのゆがんだ判断」
- 慣れていることを重視
- 限られた情報や枠組みで考えてしまう
- サンクコスト(それまでにかけた時間や労力)が大きいものを継続したがる
主張の根拠にならないもの
- 自分が思うから
- 〇〇が言っているから
- 多数の人が言っているから
議論の目的
- 論破ではなく、第三者を納得させること(客観的妥当性を導くこと)
結論が出ない話し合いは議論ではなく雑談
- 準備が8割
- 根拠が命
主張の妥当性は「誰が」言ったかではなく「何を」言ったかによって決まる。
最も重要なのは、結論自体ではなく、結論を出すに至った過程
(過程を抑えておくと、前提が変化してしまった場合に、
過程を検証し直せばよいので、以後の結論の修正が容易になるため)
2時間目 漠然とした問題を「具体的に」考える
議題は、
- 二者択一になるくらい具体的なものを選ぶ(「A or B」「Do or notDo」など)
- 議論に値するものを選ぶ
- 明確に結論が出るものを選ぶ
「<具体的な行動>を取るべきか否か」
が最も思考しやすい<具体的な行動>の枠組みを小さく捉えすぎない
例えば、大学の学科選びで悩む以前に、学部を検討した方がよいケース
3時間目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する
ディベート思考の考え方
ある行動をとった時に生じるメリットとデメリットを洗い出し、比較
行動のメリットが成立する条件
- 内因性(現状になんらかの問題が有ること)
- 重要性(その問題が深刻で有ること)
- 解決性(問題がその行動によって解決すること)
行動のデメリットが成立する条件
- 発生過程(その行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)
- 深刻性(その問題が深刻であること)
- 固有性(現状ではそのような問題が生じていないこと)
※「機会費用」(「その行動を取らなければ実現できるはずだったことができなくなってしまうこと」)もデメリットとして考える。
4時間目 反論は、「深く考える」ために必要なもの
反論はメリット・デメリットの3条件に対して行う
メリットへの反論
- <内因性への反論>そんな問題はそもそもないのでは?
- プラン(議題の行動)を取らなくても問題は解決する
- そもそも現状に問題はない
- <重要性への反論>問題だとしても、たいした問題ではないのでは?
- 質的に重要ではない
- 量的に重要ではない
- <解決性への反論>重要な問題だとしても、その方法では解決しないのでは?
- プランを取っても別の要因が生じるため、問題は解決しない
- プランは問題の原因を正しく解決しない
デメリットへの反論
- <発生過程への反論>新たな問題は生じないのでは?
- プランだけではデメリット発生にはいたらない(他の条件が必要)
- プランの影響はデメリット発生にいたるには弱すぎる
- <深刻性への反論>問題が生じたとしても、たいした問題ではないのでは?
- 質的に重要ではない
- 量的に重要ではない
- <固有性への反論>重要な問題だとしても、すでにその問題は生じているのでは?
- プランを取っていない現状でも問題は起こっている
- プランを取らなくても、将来、同様の問題が起こる
5時間目 議論における「正しさ」とは何か
「正しい主張」の3条件
- 主張に根拠がある
- 根拠が反論にさらされている
- 根拠が反論に耐えた
議論において「賛否両論だから決めない」というのはよくあるダメなパターン
主張と根拠のあいだにある、見えづらい前提を「推論」と定義
- 主張
- 最終的に訴えたい結論
- 根拠
- 主張を支持する理由
- 推論
- 主張と根拠のつながり、根拠がどれくらい主張を支えているかを説明する論理
推論の分類と弱点
1.演繹
一般的・普遍的な前提から論理的推論によって個別的な結論を導き出すこと
- 妥当性の低いパターン
- 言葉の定義を曖昧にすることで無理な一般論を作り、それをもとに個別の事例を説明するパターン
2.帰納
演繹の逆に、いくつかの個別の事例から、論理的推論によって一般的・普遍的な結論を導き出そうとすること
そもそもとして、いくら個別の事例を挙げたところで、結論が絶対に正しいとは言えない
- 妥当性の低いパターン
- 都合のよい事例、偏った事例だけを集めてしまうパターン
3.因果関係
「原因Aがあるとき、結果Bが起こる」
- 妥当性の低いパターン
- 「因果関係が逆」、「因果関係と相関関係の混同」、「特定の原因にのみ着目する」
6時間目 武器としての「情報収集術」
証拠資料(エビデンス)を用いる際の注意点
- 証拠資料に頼らず、自分でも考える
- 関係のない証拠資料や、間違った証拠資料を使わない
- 結論しか書いていない証拠資料は使わない(根拠が不明、もしくは希薄だから)
エビデンスに基づいた主張に反論する際の着眼点
- 資料の拡大解釈
- 想定状況のズレ
- 出典の不備
- 無根拠な資料
インタビューを行うときの3つのポイント
- すべての人は「ポジショントーク」(自分の立場に基づいた偏った意見)
- 結論ではなく「理由(根拠)」を聞く
- 一般論ではなく、「例外」を聞く
情報や知識というのは、判断を行うためのもの
7時間目 「決断する」ということ
メリット・デメリットは、
3つの成立条件のうち、
どれか一つでも潰されると主張が完全に潰されたこととなる。
反論に対して、正当な再反論ができれば、主張は潰れない。
判定は、
「A or B」、「Do or not Do」のメリットとデメリットを
「質×量×確率」の観点で比較して、決定する。
量を考える時は、短期的な量だけでなく、将来を含めた長期的な量も視野に入れるべき。
客観的な判断材料が出揃い、
最後の最後は主観で決めるケースも多々有り得る。
例えば、
「自分の幸福」と「母親の不幸」を天秤にかけなければならなくなった場合、
どちらを重いと考えるかは、その人の生き方・哲学にもかかわってくる問題。
ディベート思考とは、客観を経て、主観で決断する方法。
なんらかの絶対解や真実を求めようとすることは、
「誰かの決めた正解」や、すでに役割を追えた「古い意思決定」に
頼ってしまうという、もっとも危険な考え方、生き方につながる。