『武器としての決断思考』読書メモ

瀧本哲史『武器としての決断思考』を読んだので、
要点をまとめたいと思います。

武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)

概要

タイトルに決断思考と有るが、ディベート思考の解説が大半。

かつてよりも決断が必要な時代になった
⇒ダメな判断・議論のパターン指摘
⇒判断力を強化するディベートの枠組みを解説
捕捉:判断材料を集める情報収集の方法

目次

はじめに 「武器としての教養」を身につけろ
ガイダンス なぜ「学ぶ」必要があるのか?
1時間目 「議論」はなんのためにあるのか?
2時間目 漠然とした問題を「具体的に」考える
3時間目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する
4時間目 反論は、「深く考える」ために必要なもの
5時間目 議論における「正しさ」とは何か
6時間目 武器としての「情報収集術」
7時間目 「決断する」ということ

はじめに 「武器としての教養」を身につけろ

現代の日本は安定成長期を終了したため、
これまでの価値観や方法、人生のレールというものは、
意味をなさなくなってきている

若い世代が最も学ぶべきは
「意思決定の方法」

あらゆるジャンルで自分で考え、
自分で決めなければならない場面が増えるだろうから

以後、ディベート = 意思決定のツールを紹介

ガイダンス なぜ「学ぶ」必要があるのか?

「知識」をなんらかの「判断」「行動」につなげられなければ、
なんの意味もない
(自動車の「認知・判断・動作」のイメージ)

知識よりも考え方を身につけた方がレバレッジが大きい

エキスパートよりもプロフェッショナルを目指すべき

筆者のプロフェッショナルの定義

  1. 専門的な知識・経験に加えて、横断的な知識・経験を持っている
  2. それらをもとに、相手のニーズに合ったものを提供できる

エキスパートは代替可能な人材である
解決まで持っていけるとは限らない

現代では「変化に対応できないこと」が最大のリスク
時代が「計画の時代」から「カードの時代」になった。
(選択肢を持っておいて、状況に応じてジャッジしていくイメージ?)

1時間目 「議論」はなんのためにあるのか?

ディベートの存在意義

  • 正解ではなく、「いまの最善解」を導くための議論

人の認識や意思決定はゆがみやすい

陥りがちな「3つのゆがんだ判断」

  1. 慣れていることを重視
  2. 限られた情報や枠組みで考えてしまう
  3. サンクコスト(それまでにかけた時間や労力)が大きいものを継続したがる

主張の根拠にならないもの

  1. 自分が思うから
  2. 〇〇が言っているから
  3. 多数の人が言っているから

議論の目的

  • 論破ではなく、第三者を納得させること(客観的妥当性を導くこと)

結論が出ない話し合いは議論ではなく雑談

ディベート

  • 準備が8割
  • 根拠が命

主張の妥当性は「誰が」言ったかではなく「何を」言ったかによって決まる。

最も重要なのは、結論自体ではなく、結論を出すに至った過程
(過程を抑えておくと、前提が変化してしまった場合に、
過程を検証し直せばよいので、以後の結論の修正が容易になるため)

2時間目 漠然とした問題を「具体的に」考える

議題は、

  1. 二者択一になるくらい具体的なものを選ぶ(「A or B」「Do or notDo」など)
  2. 議論に値するものを選ぶ
  3. 明確に結論が出るものを選ぶ

「<具体的な行動>を取るべきか否か」
が最も思考しやすい<具体的な行動>の枠組みを小さく捉えすぎない
例えば、大学の学科選びで悩む以前に、学部を検討した方がよいケース

3時間目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する

ディベート思考の考え方
ある行動をとった時に生じるメリットとデメリットを洗い出し、比較

行動のメリットが成立する条件

  1. 内因性(現状になんらかの問題が有ること)
  2. 重要性(その問題が深刻で有ること)
  3. 解決性(問題がその行動によって解決すること)


行動のデメリットが成立する条件

  1. 発生過程(その行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)
  2. 深刻性(その問題が深刻であること)
  3. 固有性(現状ではそのような問題が生じていないこと)

※「機会費用」(「その行動を取らなければ実現できるはずだったことができなくなってしまうこと」)もデメリットとして考える。

4時間目 反論は、「深く考える」ために必要なもの

反論はメリット・デメリットの3条件に対して行う

メリットへの反論

  1. <内因性への反論>そんな問題はそもそもないのでは?
    1. プラン(議題の行動)を取らなくても問題は解決する
    2. そもそも現状に問題はない
  2. <重要性への反論>問題だとしても、たいした問題ではないのでは?
    1. 質的に重要ではない
    2. 量的に重要ではない
  3. <解決性への反論>重要な問題だとしても、その方法では解決しないのでは?
    1. プランを取っても別の要因が生じるため、問題は解決しない
    2. プランは問題の原因を正しく解決しない


デメリットへの反論

  1. <発生過程への反論>新たな問題は生じないのでは?
    1. プランだけではデメリット発生にはいたらない(他の条件が必要)
    2. プランの影響はデメリット発生にいたるには弱すぎる
  2. <深刻性への反論>問題が生じたとしても、たいした問題ではないのでは?
    1. 質的に重要ではない
    2. 量的に重要ではない
  3. <固有性への反論>重要な問題だとしても、すでにその問題は生じているのでは?
    1. プランを取っていない現状でも問題は起こっている
    2. プランを取らなくても、将来、同様の問題が起こる

5時間目 議論における「正しさ」とは何か


「正しい主張」の3条件

  1. 主張に根拠がある
  2. 根拠が反論にさらされている
  3. 根拠が反論に耐えた

議論において「賛否両論だから決めない」というのはよくあるダメなパターン

主張と根拠のあいだにある、見えづらい前提を「推論」と定義

主張
最終的に訴えたい結論
根拠
主張を支持する理由
推論
主張と根拠のつながり、根拠がどれくらい主張を支えているかを説明する論理


推論の分類と弱点

1.演繹
一般的・普遍的な前提から論理的推論によって個別的な結論を導き出すこと

妥当性の低いパターン
言葉の定義を曖昧にすることで無理な一般論を作り、それをもとに個別の事例を説明するパターン

2.帰納
演繹の逆に、いくつかの個別の事例から、論理的推論によって一般的・普遍的な結論を導き出そうとすること
そもそもとして、いくら個別の事例を挙げたところで、結論が絶対に正しいとは言えない

妥当性の低いパターン
都合のよい事例、偏った事例だけを集めてしまうパターン

3.因果関係
「原因Aがあるとき、結果Bが起こる」

妥当性の低いパターン
「因果関係が逆」、「因果関係と相関関係の混同」、「特定の原因にのみ着目する」

6時間目 武器としての「情報収集術」


証拠資料(エビデンス)を用いる際の注意点

  1. 証拠資料に頼らず、自分でも考える
  2. 関係のない証拠資料や、間違った証拠資料を使わない
  3. 結論しか書いていない証拠資料は使わない(根拠が不明、もしくは希薄だから)

エビデンスに基づいた主張に反論する際の着眼点

  1. 資料の拡大解釈
  2. 想定状況のズレ
  3. 出典の不備
  4. 無根拠な資料

インタビューを行うときの3つのポイント

  1. すべての人は「ポジショントーク」(自分の立場に基づいた偏った意見)
  2. 結論ではなく「理由(根拠)」を聞く
  3. 一般論ではなく、「例外」を聞く

情報や知識というのは、判断を行うためのもの

7時間目 「決断する」ということ

メリット・デメリットは、
3つの成立条件のうち、
どれか一つでも潰されると主張が完全に潰されたこととなる。

反論に対して、正当な再反論ができれば、主張は潰れない。

判定は、
「A or B」、「Do or not Do」のメリットとデメリットを
「質×量×確率」の観点で比較して、決定する。

量を考える時は、短期的な量だけでなく、将来を含めた長期的な量も視野に入れるべき。

客観的な判断材料が出揃い、
最後の最後は主観で決めるケースも多々有り得る。

例えば、
「自分の幸福」と「母親の不幸」を天秤にかけなければならなくなった場合、
どちらを重いと考えるかは、その人の生き方・哲学にもかかわってくる問題。

ディベート思考とは、客観を経て、主観で決断する方法。

なんらかの絶対解や真実を求めようとすることは、
「誰かの決めた正解」や、すでに役割を追えた「古い意思決定」に
頼ってしまうという、もっとも危険な考え方、生き方につながる。